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幼稚部創設の話に入る。ある日、ランゲージ・ハウス(以下、ILH)がまだ英語塾のようものをやっていた時、保護者が「うちの子はいつになったら英語が話せるようになるのでしょうか。」と聞いてきた。それまでの私は「地道にクラスを続けていけばいつかは話せるようなるでしょう。」と言っていたのだが、この時は違った。「週一回ではいつまでたっても話せるようにはなりません。」所詮英語塾といのはビジネスが優先する。生徒一人入ってなんぼという世界である。生徒が欲しければ嘘でもいいから「うちの塾に通っていれば必ず話せるようになります。」と答えなくてはいけない。それをしなかったのは塾とは決別しようと思ったからだ。私のビジネスフィロソフィーの根底には青臭いかもしれないが社会貢献がある。これがないと仕事は楽しくない。英語塾に社会貢献度がないわけではないが、希薄である。本当に日本の子供達の将来を5年、10年のスパンで考えたら週一の習い事はどれも貢献度が低い。逆に子供達を疲れさせ、混乱させる事さえある。とにかく子供達が毎日英語を学べる環境は学校以外に提供できないのであれば、まずは幼稚園を作ろう!となった。当時ILHの事務所は黒部家の日本間、そこに事業を応援してくれるママたちが集まった。しかし誰一人として幼稚園作りを経験していないので近所の幼稚園のハンドブックを参考に、運営方針や料金、保育理念などのストラクチャーを作り、英語プログラムを入れた。問題は保育料金。外国人の人件費は高い。毎日の勤務の中で情熱を失わず、しっかり子供達に向き合える人材となるともっと高いが、近隣の幼稚園とあまり料金差があっては生徒を囲い込めないので、赤字覚悟の設定。これがILH幼稚部のスタートだった。
つづく
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)
※数年前のILH Connectionのコーナーの一つとして寄稿された文章になります。