
2018年1月に執筆しました。
【前編】はこちらから
さて、ランゲージ・ハウス幼稚部の日本語はどうだろうか。まず一番大切なのが遊びの中での日本語である。特に外で元気に遊ぶ時、子供たちは自然体である。大きな声で日本語を発声し、保育士も大きな声でしかり、褒め、躾ける。この日常が日本語でのコミュニケーション能力を高める大切な要素だと考える。したがって日本人保育士はそこに外国人講師が一緒でも徹底して日本語で対応する。逆に外国人講師が中心になって遊ぶときは英語であるが、まだ英語でコミュニケーションをとるこが十分ではないので、語彙を取りながらコミュニケーションをとる訓練をする。また重要なのが日本語での歌である。歌詞の中に日本語の良さを見出せるものや、唱歌と呼ばれる昔から歌われてきた曲などを毎日取り入れることによって自然に美しい日本語が身につく。もう一つお弁当の時間である。子供達がママの作ったお弁当を開ける時に出てくる自然で子供らしい日本語で保育士たちがコミュニケーションをとる。ランゲージ・ハウスでは外国人が参加するテーブルと日本人保育士が参加するテーブルを毎日シフトしていくことで、ランチタイムコミュニケーションをバイリンガルタイムとしているが、ランチタイムは日本語コミュニケーションに欠かせない時間でもある。そして午後の読書の時間である。幼児期に出会う日本語の本はたくさんある。最初は絵を見るだけでも、横で保育士たちが話しかけたり、聞いて上げることで本に興味を持つようになる。そんな日常を繰り返すことで日本語力、特に文章力が身につく。年長になり一人で本が読めるようになると、年下の園児たちに読んできかせるということもできるようになる。
よく日本語が教育されていないのに、英語は時期相応という意見をマスコミで云々しているが、ランゲージ・ハウスではこの同時進行が可能であるという前提での教育をしている。根拠は今まで海外で見てきているバイリンガル教育の現場である。日本語も世界にある一つの言語である。日本語が特に難しいとか、西洋の言葉とは違うからというような理由は通用しない。大切なのはそれぞれの言語に真剣に向き合えるような環境を作ってやることだと信じてやまない。
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)
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