
2017年4月に執筆しました。
日本の4月は事始めの月である。入園、入学、入社とワクワクドキドキの入り混るときである。これは迎え入れる方も同じで、教室内を整えたり、プログラムの内容を確認したり、備品を揃えたりと忙しい。そしてあっという間に入園式となる。入園式が終わると日々戦いの連続で、保育士も外国人講師も園児たちが園生活に慣れるため全力で園児たちと向き合う。そんな状況とは知りつつ、朝のミーティングで「ランゲージのフィロソフィーは何ですか?」と突然の質問をする。
「自分力」「語学力」「日本人力」と答えはするが、「では保育や英語学習にどう反映させていますか。」と聞く。「例えば昨日はどんなところでこの目標を意識しましたか?」とも聞く。初心に戻るとはこんな時である。スタッフだけではない。私自身も日常のドラマにばかり対応していると、一体何のために事業をしているのかとなどとは考えず、給与はちゃんと払えるか、新しいスタッフは見つかるか、クライアントからの契約書はちゃんとくるかなど、気がつくと夜になっていて寝てしまい、そして朝がくる。
こんなことでは駄目だと思って考えたのが、月に一度は初心に帰って幼稚部を考えるという習慣である。まず10年前に作成した事業計画書を見る。幼稚部を作ったときの事業計画を振り返る。初期のコネプトやプログラムを振り返る。昨年の今と今年の今を比べて見る。ただこれだけのことだが先のことばかりが気になる悪循環を少しは回避できる。初心に戻るとは決して後戻りすることではなく、先に進むために必要な後戻りであると最近やっと気がついた次第である。
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)
このエッセイはアーカイブとして公開しています。この他の黑部のエッセイ・アーカイブをご覧になりたい方は、カテゴリー「ILH History」をご覧ください。