
2019年4月執筆しました。
バイリンガルスクールInternational Language House幼稚部へのご入園おめでとうございます。入園式の日、家族で帰国したときに植えた桜の苗木が今では大樹となって綺麗な花を咲かせている。植えた当時は幼稚園を作ろうとは夢にも思わないようなサラリーマン生活を送っていたのだから人生とはわからない。実は私が黒部に嫁いだときにも庭に大きな桜の木があった。戦前の洋館だったので映画の撮影にも使われたと聞いている。しかし私たちがアメリカ生活を送っている間に主人の父が土地の3分の2を売ってしまい、桜の木もその中に入っていた。主人の母は長年連れ添った桜の木が可哀想と言って毎日お酒をかけてあげていたという。他人に渡った桜の木はその家の新築とともに切られてしまった。
ところでこの桜、海外でも至る所で見ることができる。アメリカではワシントンDCのポトマックリバー沿いの桜並木タイダルベイスンが有名だ。スエーデン、ストックホルムにある王立公園もかなりのボリューム感がある。カナダはトロントにあるハイパークの桜が有名だ。少し白色がかった桜でエレガントな感じがする。お隣韓国や台湾でもお花見を楽しむ習慣もある。これだけ海外でも桜を見られる場所が多いことを知ると、桜、桜と言って日本を紹介するのを考えてしまう。海外から観光で来日する外国人に日本のどこが好き?聞くと若い人たちのほとんどが「東京」と答える。なぜ?と聞くと「毎日の変化がすごい」という。食べ物は?というと「たこ焼き」が若い世代には圧倒的人気でお寿司を超えている。メロンパンも人気がある。アクティビティーではマリオカートや富士急ハイランドがダントツ。イグワナカフェやリスカフェも相変わらず人気がある。日本人ぐらい「工夫」にたけた国民はいない。しかしこの「工夫」は「無い」ところから生まれる。子供達に全てを与えてしまったら「工夫」の力は育たない。
最近お絵描きに包装紙の裏を使わなくなった。ご飯粒からノリを作るなんて汚いと言われる。「工夫」から生まれたきんぴらごぼうなどの惣菜はコンビニで買えるからそこに「工夫」の影はない。今まで日本経済は「工夫」の力と主に成長してきた。より良く、より便利に、より美味しくをスローガンに工夫を重ね商品価値を高めてきた。これを可能にした年代は、明らかに子供時代に「工夫」を体験できている。今の子供達に与えられる「工夫」の機会を真剣に考えたい。
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)
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