
2022年6月にILH Connection向けに執筆しました。
そもそも大学時代に英語学習に真剣に取り組まなかったことが問題である。外国語学部英語科に在籍していたが友人の協力なしでは卒業すら危うかったことを考えると、私の英語は基本が欠如している。ただ持ち前のいい加減さがプラスに働くことがよくあり、特に外国人にはヘンテコな英語が受けたり、諦め掛けていた案件が動くことがある。
その昔サラリーマンをしていた頃、社長と一緒にNYにあるビルディングメインテナンスの会社を訪問した。社長はその会社に投資をする代わりにアメリカから技術者の派遣をしてほしいという要望だった。しかし先方は技術者の人件費を日本側で持って欲しいということになり、年俸を日本円で2千万要求してきた。私はその旨を社長に話した。「あちらは2000万ドルを要求していますが。大丈夫でしょうか。」と聞くと社長は急に怖い顔になって立ち上がりふざけるのもいい加減にしろと言わんばかりの剣幕で「帰るぞ!」と怒鳴った。その場にいた全員が一体どうしたのだというような顔になり事の次第をつかめずにいたが、気がついたら社長とエレベーターの中だった。「黒部さん、2000万ドルは日本円で20億以上だよ。冗談じゃない!」社長は怒りが収まらないと言った顔つきで私を怒鳴りつけた。瞬間「あれっ、2000万ドルじゃなくて、日本円で2千万って言ってたような、なんかゼロが違ったかな?」と思い直し頭の中で計算を始めた。
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黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)