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結婚式は出席者が多いこともあって会場に隣接した食堂にミールの合図と共に入り、着席すると待っていましたとばかりに7〜8人の給仕係がわっと寄って来てバケツの容器から大型おたまのようなもので配膳して行く。飲み物は水だけ。3日間続いた式の最中一日ゲスト一人当たり4本のペットボトルを消費するとして3日間だと16800本のペットボトルが消費されたことになる!
結婚式の内容を書くと100ページぐらいになりそうなので割愛するが、圧巻は1400人のゲストが最終日にプレゼントを持ってやってくる。それを壇上で新郎新婦とその両親が待ち受けゲストにご挨拶をする。これに3時間ほどを要し最後は誰が終了の挨拶をするでもなく3日間にわたるイベントが終わる、と思ったら今度は新婚夫婦が伝統儀式に従って新生活のゲームのようなことを始める。ヤシの実を取ったかとらないか、甘いお菓子のクリームを顔に塗り合うとかのたわいない遊びだが11種類をこなして行くと2時間ほどかかる。ゲストも疲れるが、新郎新婦とその家族は不眠不休状態で結婚式を進めて行く。インドでは離婚率が低いのも、これだけの体力、時間、お金、人を総動員しているのだから簡単には夫婦をやめるわけにはいかないのも事実のようである。新郎新婦は2ヶ月後にアメリカへと旅立った。これだけ超盛大な結婚式をしても国には残らずアメリカに行ってしまう。インドの富裕層は子弟のほとんどを高校か大学でアメリカかイギリスへ留学させる。卒業後インドの給与では留学費用は取り戻せないとばかりにアメリカの企業に就職する。しかしインドで感じていたような家族の絆や深い友人関係などの幸せ感をアメリカで感じるのは難しい。
アメリカに留学し、アメリカの企業で働く、この価値観が根本的に変わる日が来るかもしれない。
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)