
自分力と語学力、そして日本人力を兼ね備えた日本人、グローバル社会に強く生きることの出来る日本人の基盤を作るILH独自のバイリンガル教育を始めてから今年で5年目。設立当初2名の幼稚部園児が25倍になった。マンモス幼稚園の園児数には及ばないが、他の部分で時代を先取りしていると自負している。
今日本は、グローバル社会が国内でも広がりつつあることに気づき、自分や家族はこのままで大丈夫だろうかという意識を持つと同時に、インターナショナル社会での立ち位置を真剣に考え始めている。明治維新がそうであったように、日本人は世界に遅れをとることを嫌う国民であり、特に世界で一番になることを切望する。
今から20年程前、日本にはたくさんの「インターナショナルスクールが出来た。しかし現実には、英語力と経済力さえあればインターナショナル人種の仲間入りができるという不文律があるだけだった。
若い友人から、朝起きたら愛車が消えていたという話を聞いた。愛車がインターナショナルスクール(以下、インター)への切符代わりになった、ということらしい。しかし、数年経つと英語は上達するものの日本語を話す親の言うことを聞かなかったという。「手伝ってくれる?」とママ、” I am busy right now.”、「手を貸してくれる?」とママ、”Can’t you see? I am doing my things now.” しかし “Can you please help?” と英語であれば “OK” だ。最初は冗談だと思ったが、その後も続き、似た話を会社経営者からも聞いた。インター卒業生を育て難い原因は、英語が話せるという特権が邪魔し、社会人としての日本語力が弱く、ホウレンソウが理解できないこと。
ILHはただ英語と日本語を教える園ではなく、幼児期に磨かれるバイリンガルな感性が、日本語と英語の微妙なニュアンスを理解し、将来「どちらの言語の本質も理解できる能力」を身につけること、を大きな目標としている。日本では革新(改革)を意味する言葉 “Innovation” がよく使われるようになったが、本来は革新新技術が社会に浸透し、社会に大きな変化を起こすことを意味する。バイリンガル教育の強さとは、異なる文化、言語の本質に機敏に対応できる感覚と能力を育むこと。どこにいても前向きに社会を理解し、問題解決に全力を尽くせる自己体力を、幼児期から植え込むことができる、と確信する。
幼稚園が「楽しく遊ぶところ」であることは大切な要素だが、社会の変化に伴い、「子供たちの少し先の将来を見据えること」もまた大切である。20年後の社会を想像して欲しい。どのくらいバイリンガル能力のある人間が求められるのか、を。
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)
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