インターナショナル・ランゲージ・ハウス幼稚部園舎

2017年12月に執筆しました

ランゲージ・ハウス幼稚部では年長組のお泊まり保育がある。園児たちにとっては友達や先生との楽しい思い出を作ることが目的であるが、私にとっては3年の間に園児たちがどのように成長したかを、同じ屋根の下で確かめることが目的である。

 この一泊旅行のコースは、油壺にある「小網代の森」での自然散策から始まる。

ここでは外国人講師とコミュニケーションを取れるか、どのくらい自発的に自然の中から興味あるものを発見できるかがポイントとなる。今年は冬のお泊まりだったこともあり、冬の林でどれくらいの発見ができるか気になっていたが、小さい昆虫や植物を見つける子供の特技は季節を問わずに凄いことを見せてくれた。昼食はシーボニアヨットハーバーにあるレストランでのフォーマルなセッティングの中で子供たちのマナーを観察する。ここには一般のお客様もいるので園児たちはそれなりに緊張している。真っ白なテーブルクロスに銀のフォークとスプーン(安全を考慮してナイフはNGとなっているが、小学生になったらナイフとフォークに挑戦してもらいたい)が置かれ、係りの方が丁寧にプレートを配膳してくれる。園児が守らなくてはいけないルールは「ありがとうございます。」と「~ください。」英語ならThank youとPleaseだが、日本人同士なので丁寧な日本語を使い、またお友達同士の会話も大声を出さないこととなっている。このように書くと堅苦しい昼食会のように聞こえるが、きちんとした環境で食事を楽しむという習慣がつくと、食そのものへの関心も高まる。例えばいつもは手づかみで食べているフレンチフライ、園児たちにフォークで食べた時の味を聞くと、もっとジャガイモの味がするという。マクドナルドとの違いがわかってくれれば嬉しい。そして、大人にも難しい、というより日本で習慣化されていないのがナプキンの使い方である。口の周りをクワンクアンにさせておしゃべりしている大人をよく見かけるが海外では顰蹙をかう。少なくともランゲージ・ハウスの園児たちには良い習慣を付けてほしいので私もかなり口うるさく言うが、食事も中盤に入ってくると自然にナプキンが使えている子供がいることに気がつく。やればできるである。

 ホテルでは合宿所さながらの大部屋で大騒ぎとなるが、布団を運んだり、それぞれの荷物をきちんと整理したりするのは日本人保育士の指示で行われる。家族で旅行をするときは自発的にはしないと思われるタスクを与える。できないと言って放り出すのは勝手だが、自分の身の回りのことができなければ次のアクティビティーには参加できない。

 夕食は一般客もいる所でのビュッフェ。子供達にとっては好きなものを好きなだけとっていいといっても、いざたくさんの食べ物が目の前に並ぶと見る方に忙しく、5、6歳児では食べ物に対する欲がない。食べられるだけの量をとる子がほとんどである。これが大人だと、パスタの上にパンが乗っかったり、刺身の横にローストビーフがきて、その横にデザートが置かれたりと、食欲ではなく明らかに物理欲の塊と思われるプレートを持って右往左往することが多い。マナーもへったくれもなくなる。

後編につづく

※現在は、幼稚部でお泊り保育は実施しておりません。

黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)

このエッセイは、弊社CEO黑部が今まで書いてきたエッセイのアーカイブになります。アーカイブを更にご覧になりたい方は、カテゴリー「ILH History」をご覧ください。

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