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夕食後は一人¥500を持って売店で買い物をする。目的は家族への贈り物ということになっている。子供達に消費税のことを説明しても理解が難しいが、¥500ぴったりのものが¥540になる現実を体験してもらい、お店の人に「これは消費税ですよ。」と言われた方が社会学習になる。昔は街の商店街のおじちゃんたちがお金の使い方や払方を教えてくれたが、今のコンビニはあまり教えてくれない。将来世界のどこかで買い物に遭遇し、自分の言葉で買い物できなければ生きていけないことを体験してほしいと思う。
就寝前の一大アトラクションはランゲージ・ハウス恒例のお化け屋敷である。
保育士と外国人講師が練りに練って作るお化け屋敷には、園児二人が組になって部屋に入る。一番怖いのは、ロングヘアーの外国人がザンバラ髪になり押入れの中で懐中電灯を顔に照らし薄ら笑いを浮かべる瞬間だと子供達から聞いたが、
私も背筋に寒いものを感じた。
さて、こんな子供達との旅を通して見えてくるのが、家でのしつけである。一年365日を家庭で過ごすのなら、幼稚園はたったの230日ほど、確かに一日に過ごす時間は長いとはいえ、幼児にとって家庭での時間はあらゆる意味で影響力が多い。結論から言う。時間がかかっても、イライラしても、電車に間に合わなくても、子供ができそうなことに親は手を出さないと言うことである。子供に「できない。」と言われても「教えてあげるからやってごらん。」と言う態度で挑むことである。私もそうだったが親はなぜだかいつも焦っている。まして「できない。」と言われると「では、私が」と反応する。これが2年3年経つうちに気がつくと何も一人でできない子供が育っている。
もう一つは挨拶である。自発的に挨拶のできる子は少ない。園内ではできるのに公共の場に出るとできなくなってしまう子もいる。私は挨拶というのは「気遣い」の一つだと思っている。他人を気遣えば自ずと声をかけたくなるものだ。自分のことばかり考えていると人のことはどうでもよくなる。海外では見知らぬ人でも朝道であったらGood morningなのに日本人は皆下を向いてマスクをして歩いている。外国人からすると異様な光景だが日本人は普通だと思っている。下を向いていては挨拶などできるわけがない。親が下を向いて歩けば子供も下を向く。親の影響力は大きい。
しつけは長い人生のほんの短い期間でしかできない大切なことである。それもある年を超えると有効ではなくなる。特に幼児期のしつけはダイヤモンドの原石をカティングし磨に等しいと思っている。ランゲージ幼稚部はしつけを重んじる、がしかしそれが習慣となって家庭で継続されない限り意味がない。学校と家庭の協力体制の重要性を感じている。
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)