
2022年8月に執筆しました
8月航空運賃が一斉に上がった。お金にはとてもシビアーな義理息子が3年ぶりにシカゴに帰ることになって格安航空運賃を探していたら、片道最低価格で19万、往復だと34万はすると言っているので、そんなバカな、節約家のあなたが格安運賃を探せないなんておかしいわよ、とは言って見たものの、どのサイトを見ても30万以上する。29万というのがあったが、なんと乗りかえ3回で離陸から目的地到着まで30時間もかかる。航空券そのものが高級品になってしまったようで、このような金額では学生はおろか、ファミリーで海外旅行もままならない。おまけにこの円安で海外での宿泊や買い物も節約覚悟で行かないと大変なことになる。そして私がもっとも懸念していることが、夏休みを利用して海外経験をしたいと計画していた若者が、その予定を諦めなければならないことになってしまう現実である。実際そのような人たちが私の周りにもたくさんいる。コロナ禍海外渡航を我慢してきた人たちにとっては、羽田や成田でのPCR検査がなくなり、最悪自粛だったホテルでの10日間の監禁がなくなって、やっと海外に行けると思っていたら、この航空運賃の値上がりである。
私が学生の頃、海外旅行は高嶺の花だった。まして海外留学に至っては頭の良い、そして英語の話せる人たちだけに与えられる特権みたいなものだった。大学生の頃アメリカのアイビーリーグに憧れてハーバードやイエールを目指すクラスメイトがいたが、彼女たちがターゲットにしていたのは給費留学だった。私も含めた一般学生は飲み会や部活、バイトが学生生活の主な部分を占めていたが、留学志願者はそんなものはどうでもよく、給費留学試験に合格することだけを目指していた。出せるところから航空代、宿泊代、学費、滞在費を出してもらい夢を実現すると言った強い目標設定には周りが近寄れないすごさもあった。
後編へつづく
黑部 美子(インターナショナル・ランゲージ・ハウス CEO)
このエッセイは、弊社CEO黑部が今まで書いてきたエッセイのアーカイブになります。アーカイブを更にご覧になりたい方は、カテゴリー「ILH History」をご覧ください。